痩せすぎ(低体重)
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
◆意外に多い「太れない」悩み
当薬局では痩せすぎ(低体重)に関する漢方治療のご相談をお受けしています。
痩せすぎ(低体重)の漢方治療の症例は こちら
体重に関する悩みといえば、「痩せたい」というケースが取り上げられることがほとんどですが、痩せすぎや低体重で、太りたいと悩む人も少なくありません。
体重を増やして体力をつけたいのに、いくら食べても太れない、小さい頃からからだが弱いほうで、すぐかぜをひいたり、おなかをこわしたりする、など、悩みはさまざまです。
美容上でも、貧弱にみえる、水着や洋服が似合わないなど、痩せすぎのからだにコンプレックスを感じている人も少なくありません。
体重が少なすぎると、体力がない、抵抗力がない、疲れやすい、免疫力が弱く感染症など病気にかかりやすいことがあるほか、不妊、冷え症、生理不順、無月経、栄養失調、骨密度の低下、うつ病などとの関連も気になります。
漢方では、からだ全体の機能を調えることにより、痩せすぎを解消し、標準的な体重に近づけます。健康的にきれいに太るのが目標で、ぜい肉や内臓脂肪で体重を増やすのでありません。
癌や、甲状腺などホルモン内分泌系の疾患、摂食障害などで痩せてしまう場合もありますが、こういう場合は、これらの疾患の治療を並行して進めます。
◆痩せすぎによくあるタイプ・・・あなたはどれ?
<体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます>
(1)「脾気虚(ひききょ)」証
五臓の「脾」の機能が低下している体質です。消化吸収機能が衰えているために、食べたものがしっかりと血となり肉となってくれません。
→ 脾の機能を高める漢方薬を用います。
(2)「腎陰虚(じんいんきょ)」証
人体を構成する物質的な面を意味する陰液が不足している体質です。ホルモン内分泌系や自律神経系がバランスを崩し、基礎代謝量が多い体質になっています。
→ 腎陰を補う漢方薬を用います。
(3)「中気下陥(ちゅうきかかん)」証
胃下垂で太れないタイプです。臓器を定位置にとどめておく「気」の作用が弱く、筋肉の緊張が低下しています。
→ 必要な気を補う漢方薬を用います。
以上の証のほかに、食が細くてたくさん食べられない「胃気虚(いききょ)」、ストレス、緊張、不安が根本にあって食欲不振や消化吸収機能の低下が生じている「肝気横逆(かんきおうぎゃく)」などの証もあります。
◆生活習慣にも注意を
痩せすぎ(低体重)の改善には、生活習慣の見直しが欠かせません。とくに大事なのは、食習慣の改善です。
単純に無理をしてカロリーの高いものを大量に食べるのではなく、逆に胃に負担は少ないが滋味豊かなものを食べる、よくかんで食べる、朝食はしっかりいただく、炭水化物ばかりでなく蛋白質も意識して摂るなど、食生活を見直してみてください。
適度な運動、トレーニングも必要でしょう。筋肉をつけないことには、美しく太れません。
じゅうぶんな睡眠も大切です。睡眠は、人体の陰の部分である物質的な面を養う重要な時間です。しっかり眠ることで、からだの陰陽バランスが調い、体調がよくなります。体重も適正なところに近づくことでしょう。西洋医学的にも、睡眠中に成長ホルモンの分泌が盛んになり、肉体の成長が促されることがわかっています。
近年、価値観の変化やダイエットの普及により、女性は痩せ傾向にあるともいわれています。憧れのスタイルや体型があってのことでしょうが、長い目でみて、健康的に、元気で長生きしたいものです。
◆痩せすぎに効果的な漢方薬
四君子湯、竜胆瀉肝湯、加味逍遙散、六味地黄丸、補中益気湯
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。
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