免疫力を高める漢方薬

(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高

漢方で免疫力アップ ー 免疫力を上げる漢方を紹介します

こちらのページでは、免疫力を高める漢方薬について解説します。病気にかかるのを防ぎ、病気から早く回復するために最も重要なのは「免疫力」である、と漢方では考えています。

*目次*
免疫力とは
症状
原因
治療
漢方治療(免疫力を高める漢方)
体質別の漢方治療方針
よく使われる漢方薬
予防/日常生活での注意点

症例紹介ページもあります)

免疫力とは

免疫力は、病気にならないように人を守ってくれている力です。人が自分にとって有害なものを識別して排除していく防衛機構です。免疫力がたっぷりあれば人は病気になりませんが、免疫力が低下していると容易に病気になったり体調を崩したりします。病気や体調不良になるかどうかは、免疫力の強さが大きく関与しています。

症状

免疫力の低下により起こりやすい病気や症状には、がん(癌)の他にも各種感染症など、多々あります。たとえば、帯状疱疹、結核、肺炎、歯周病、口内炎、口唇ヘルペス、インフルエンザ、感冒、突発性難聴、尿路感染症、カンジダ症、性器ヘルペス、下痢、便秘、水虫、かぜをひきやすい、などです。糖尿病や心疾患、慢性疲労症候群になるリスクが高まるという報告もあります。また免疫力が低いと、病気が治るのに長く時間がかかります。

最近では、新型コロナウイルスの感染拡大により、免疫力を高める漢方薬の需要が増えています。

原因

大気中など外界には無数の病原菌やウイルスが存在し、常に皮膚や粘膜に付着したり、呼吸により鼻、のど、気管支に侵入したりしてきます。このとき免疫力がじゅうぶん備わっていれば、それらは容易に体内に入ってくることはなく、健康が保たれます。同じ環境で生活していれば同じ程度の細菌やウイルスに接することになりますが、病気になる人とならない人がいるのは、その人の免疫力の強さが違うからです。

体内においても、免疫力は体内の異物を排除して健康体を維持しようと働きます。たとえば、がん細胞が体内で発生しても、免疫力が強ければ強いほど、それが増殖したり転移したりするリスクは低くなります。

治療

病因(ウイルスや細菌)の排除や症状の緩和を優先したい場合は西洋医学、自らの免疫力を高めて丈夫になりたい場合は漢方が適しています。

免疫力と病気との戦いにおいて、西洋医学では病因の排除や症状の緩和を重視します。症状が緩和されると楽になりますが、たとえば人体が自ら免疫力を高めるために上昇させる体温や、異物を排除するための咳などを薬で抑えるために、病原体が長く体内に居座り続けることになり、病気が長引くことがあります。作用の強い西洋薬により免疫力自体が傷つくこともあります。

漢方治療(免疫力を高める漢方)

漢方では、免疫力と病気との戦いにおいて、西洋医学とは逆に、免疫力の強化を重視します。もちろん病因の排除も大切ですが、免疫力がじゅうぶんでないと病気が長引き慢性化したり再発したりするので、最終的には免疫力の強化が重要だ、と漢方では古来より考えてきました。

免疫力が低下する要因には、五臓六腑のバランスの不均衡、あるいは人体を構成する気・血(けつ)・津液(しんえき)・精(せい)の不足や停滞などが関係しています。五臓六腑のバランスが失調している場合は、その弱いところを漢方薬で補うなどして体質を改善し、免疫力を根本から高めていきます。

人体が持つ生命力や抵抗力のことを漢方で正気(せいき)といいます。漢方では、漢方薬で五臓六腑のバランスを調えるなどして正気を強めていくことにより、免疫力を高めていきます。

症例紹介ページもあります)

体質別の漢方治療方針

漢方では、患者一人一人の体質に合わせて、免疫力を高める漢方薬を処方します。以下に、免疫力の低下にみられることの多い証(しょう)と漢方薬を紹介します。証とは、患者の体質や病状のことです。患者ひとりひとりの証(体質や病状)に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。

  • ①肺陰虚

呼吸器や鼻、のど、皮膚で炎症や感染症を繰り返すようなら、五臓の肺の機能の失調が考えられます。よくみられるのは、「肺陰虚(はいいんきょ)」証です。肺は五臓のひとつで、呼吸をつかさどる臓腑です(「気をつかさどる」といいます)。また「皮毛をつかさどる」機能もあり、皮膚と深い関係にあります。さらに肺は「鼻に開竅(かいきょう)する」といい、鼻を肺と関連が深い器官と捉えています。鼻のことを肺竅(はいきょう)ともいいます。この肺の陰液(肺陰)が不足している体質が、この証です。陰液とは、人体の構成成分のうち、血・津液・精を指します。粘膜などがじゅうぶん潤わないために病原体に感染しやすくなっています。慢性疾患や炎症による津液の消耗などにより、この証になります。アレルギーとも関係が深い証です。漢方薬で肺の陰液を補い、免疫力を強めていきます。

  • ②脾気虚

疲れがたまると消化器の粘膜などで炎症などが生じやすい体質なら、「脾気虚(ひききょ)」証です。消化吸収や代謝をつかさどり、気血(エネルギーや栄養)の源を生成する五臓の脾の機能(脾気)が弱い体質です。気(き)は免疫力を含む生命エネルギーを意味しますが、その気がじゅうぶん脾で生成されないために体内の気が不足し、免疫力が低下します。加齢、過労、生活の不摂生、慢性疾患などにより脾気を消耗すると、この証になります。漢方薬で脾気を強めることにより、免疫力低下の治療を進めます。

  • ③肝鬱気滞

ストレスを受けて免疫力が下がることもよくあります。みられることが多いのは、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証です。からだの諸機能を調節し、情緒を安定させる働き(疏泄:そせつ)を持つ臓腑である五臓の肝(かん)の機能(肝気)がスムーズに働いていない体質です。肝は自律神経系と関係が深い臓腑です。一般に、精神的なストレスや、緊張の持続などにより、この証になります。気血が全身に行き渡らなくなるため、免疫力が低下します。あわせて、いらいら、落ち込み、情緒不安定などの症状がみられます。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、免疫力低下を治していきます。

  • ④腎陽虚

からだ全体で免疫力が低下しているようなら、「腎陽虚(じんようきょ)」証です。腎の陽気が不足している体質です。腎は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖をつかさどる臓腑です。また「水、骨、納気をつかさどる」臓腑として、体液の代謝全般の調節、骨の形成、呼吸(とくに吸気)をつかさどる機能もあります。陽気とは気のことで、人体の構成成分を陰陽に分けて考える場合、陰液と対比させて気のことを陽気と呼びます。腎陽の衰えは正気の減衰につながり、免疫力の低下を招きます。加齢とともに生じやすい証ですが、加齢だけでなく、過労、生活の不摂生、慢性疾患による体力低下などによっても人体の機能が衰え、冷えが生じてこの証になります。腎陽を補う漢方薬で、免疫力を高めていきます。

ほかにも免疫力が低下しているときにみられる証はたくさんあります。証が違えば薬も変わります。自分の証を正確に判断するためには、漢方の専門家のカウンセリングを受けることが、もっとも確実で安心です。

よく使われる漢方薬

  • ①麦味地黄丸など

呼吸器や鼻、のど、皮膚で炎症や感染症を繰り返すようなら、たとえば、麦味地黄丸(ばくみじおうがん)など、「肺陰虚(はいいんきょ)」証を治療する漢方薬を用います。

  • ②香砂六君子湯、補中益気湯など

疲れがたまると消化器の粘膜などで炎症などが生じやすい体質なら、たとえば、香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)など、「脾気虚(ひききょ)」証を治療する漢方薬を使います。

  • ③四逆散など

ストレスを受けて免疫力が下がっているようなら、たとえば、四逆散(しぎゃくさん)など、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証を治療する漢方処方が効果的です。

  • ④八味地黄丸など

からだ全体で免疫力が低下しているようなら、たとえば、八味地黄丸(はちみじおうがん)など、「腎陽虚(じんようきょ)」証を治療する漢方処方を用います。

ほかにも免疫力を高める漢方薬は、たくさんあります。当薬局では、漢方の専門家が一人一人の証(体質や病状)を的確に判断し、その人に最適な処方をオーダーメイドで調合しています。

予防/日常生活での注意点

日常生活において免疫力が低下する要因は多々あります。たとえば、疲労の蓄積、暴飲暴食など節度のない食習慣、栄養不足、不規則な生活、ストレス、運動不足、逆に激しい運動、睡眠不足、ファッション重視の薄着など寒冷な環境、乾燥、逆にじめじめとした環境、加齢、喫煙、西洋薬の使いすぎなどです。日頃からこれらの要因に留意し、免疫力が下がらぬよう心がけましょう。

 

(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)

*執筆・監修者紹介*

幸井俊高  (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。帝国ホテルプラザ東京内「薬石花房 幸福薬局」代表。薬剤師・中医師。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。「日経グッデイ」「日経DI(ドラッグインフォメーション)」にて漢方コラム好評連載中。

あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。

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自分に合った漢方薬に出会うには

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