過緊張(過度の緊張)

過緊張に効く漢方 ー「緊張体質」を漢方で改善

こちらは過緊張を漢方で治していくための解説ページです。

*目次*
過緊張とは
症状
原因
治療
治療(過緊張の漢方治療)
体質別の漢方治療方針
よく使われる漢方薬
予防/日常生活での注意点

(過緊張が改善した症例紹介ページもあります)

過緊張とは

過緊張とは、過度の緊張状態で、心身が過剰に緊張している状態です。仕事や人間関係で緊迫している状況や、初対面の人と会う時、ミスを許されない場面などに一時的に緊張するのはごく自然なことですが、緊張状態が長引いたり、緊張する頻度が頻繁だったり、緊張の度合いが強すぎたりする「過緊張」となると、さまざまな症状に悩まされます。

症状

よくみられる過緊張の症状は、のぼせ、不安感、いらいら、顔や手や脇の下に汗をかく、手が震える、寝つきが悪い、眠りが浅い、いやな夢をよくみる、胸苦しい、動悸、肩こり、頭痛、喉のつかえ感、冷え、口の中がねばねばする、などです。

自分は緊張しやすい、という思い込みがあるために、緊張する場面が近づくと思うだけで、動悸などの症状が現れる場合もあります。

心身をリラックスさせたい夜間や休息時にまで昼間や仕事中の緊張を引きずり込んでしまい、じゅうぶんな深い睡眠や休息がとれない場合も少なくありません。

就寝中に過度の緊張が続くと、ちょっとした物音で目が覚める、朝起きたときから肩や身体全体がこっている、などの症状が生じます。毎朝目覚まし時計が鳴る前に目が覚めてしまう、という人もいます。

過緊張が高じた結果として、自律神経失調症高血圧症不安神経症不眠症うつ病、パニック障害、総合失調症、胃・十二指腸潰瘍、動脈硬化、不整脈、甲状腺腫更年期障害慢性頭痛(緊張型頭痛)などの病気になる場合もあります。

原因

過緊張のおもな原因は、自律神経系のバランスが崩れて、交感神経が優位な状態が必要以上に長く続くことにあります。交感神経は、活動や攻撃に向かう状態で機能が亢進し、心身が活動や攻撃に適した状態に調整されます。

しかし、自律神経系のバランスが崩れてしまうと、活動や攻撃をする必要がないときでも交感神経が優位となり、過緊張状態になります。心や体は休みたがっているのに、興奮・緊張状態が続き、さまざまな不調が生じてしまいます。

治療

緊張や不安、不眠、発汗、動悸などの症状を薬でコントロールしたい場合は西洋医学、緊張しやすい体質(緊張体質)を根本的に改善して症状の緩和を目指したい場合は漢方が適しています。

西洋医学では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬や、抗不安薬、β遮断薬などを用い、症状を抑えてコントロールします。

治療(過緊張の漢方治療)

漢方では、過緊張は五臓の「肝(かん)」の機能不調が大きく影響していると考え、その肝の機能を漢方薬で調整することにより「緊張体質」を改善していきます。

肝は身体の諸機能を調節し、情緒を安定させる臓腑で、自律神経や情緒の安定と深い関係があります。また筋肉や関節の運動を調整する役割なども担っています。この肝の機能が失調したり、過敏になったり、弱ったりすると、心身の調節がスムーズに働かなくなり、情緒が不安定になり、過度の緊張状態となります。

もうひとつ、人間の意識や思惟など、高次の精神活動をつかさどる五臓の「心(しん)」の機能が乱れて過緊張が生じる場合もあります。この場合は心に働きかける漢方薬を用い、「緊張しにくい体質」に近づけていきます。

(過緊張が改善した症例紹介ページもあります)

体質別の漢方治療方針

漢方では、患者一人一人の体質に合わせ、肝や心の機能をととのえることにより、過緊張を治療します。以下に、過緊張にみられることの多い証(しょう)と漢方薬を紹介します。証とは、患者の体質や病状のことです。患者一人一人の証(体質や病状)に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。

**肝の不調による5つの過緊張タイプ**

(1)「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証
の気(肝気)の流れが悪くなっている状態。刺激に対する反応が敏感になり、緊張が高まります。
→ 肝気の鬱結を和らげて、ストレス抵抗性を高める漢方薬を用います。

(2)「肝火(かんか)」証
肝気の流れが鬱滞して熱を帯びた状態。強いストレスや激しい感情の起伏などが背景にあります。過緊張に加え、いらいら、怒りっぽい、ヒステリー、不眠、顔面紅潮などがみられます。
→ 肝気の流れをよくして肝火を鎮める漢方薬を使います。

(3)「肝血虚(かんけっきょ)」証
に必要な血液や栄養(肝血)が不足している体質。循環血液量の不足や栄養障害により、自律神経系が失調し、特に強い刺激がなくても緊張しやすくなっています。
→ 肝血を補う漢方薬を用います。

(4)「肝陽上亢(かんようじょうこう)」証
(3)の肝血虚がひどくなって肝のバランスが崩れ、熱が上昇した状態。頭痛、のぼせ、怒りっぽい、など熱証が現れます。
→ 肝陽を鎮める漢方薬を用います。

(5)「肝陽化風(かんようかふう)」証
(4)の肝陽上亢が進んで筋をつかさどる機能に影響した状態。震え、引きつり、めまい、ふらつきなどの症状があらわれます。
→ 肝陽を落ち着かせて内風を和らげる漢方薬を用います。

**心の不調による4つの過緊張タイプ**

(6)「心火(しんか)」証
精神をつかさどるが過度の刺激を受けて亢進し、熱を帯びた状態。じっとしていられず、焦りを感じ、不安で落ち着きません。悶々として目がさえて眠れません
→ 心火を冷ます漢方薬を用います。

(7)「心腎不交(しんじんふこう)」証
心火と同時に五臓のの陰液が消耗している証。生活の不摂生や過労、緊張する場面の継続などで、この証になります。(6)の心火の症状に加え、ほてりなどが強くなります。
→ 腎陰を潤しつつ心火を冷ます漢方薬を用います。

(8)「心血虚(しんけっきょ)」証
心の機能を養う心血が不足している体質。過度の心労や、思い悩み過ぎ、過労が続くことにより心に負担がかかり、心血が消耗して精神が不安定になります。どきどきしやすく、驚きやすいようなところがあります。
→ 心血を潤す漢方薬を用います。

(9)「心陰虚(しんいんきょ)」証
心の陰液が不足している体質ですので、心がじゅうぶん潤わされず、過度の緊張が生じています。些細なことでも緊張します。
→ 心の陰液を補う漢方薬を用います。

**ポイント**

交感神経などの緊張要因と、副交感神経などのリラックス要因とのバランスで考えると、肝鬱気滞や心火などの証は、緊張要因が強くなっている状態に近いと思われます。強いストレスや大きな環境変化でみられる緊張です。

逆に、肝血虚や心血虚などの証は、リラックス要因が弱くなっている(抑制過程が低下している)ために緊張要因が相対的に亢進している状態と思われます。ちょっとした小さなことに対してもすぐに緊張してしまう、常に緊張感に脅かされているタイプです。

よく使われる漢方薬

  • ①四逆散、加味逍遙散、大柴胡湯、半夏厚朴湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯など

肝鬱気滞(かんうつきたい)証に対しては、四逆散(しぎゃくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、大柴胡湯(だいさいことう)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などの漢方薬を用います。

  • ②竜胆瀉肝湯、柴胡加竜骨牡蛎湯など

肝火(かんか)証に対しては、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などの漢方薬を使います。

  • ③四物湯、補肝湯など

肝血虚(かんけっきょ)証に対しては、四物湯(しもつとう)、補肝湯(ほかんとう)などの漢方薬が有効です。

  • ④六味地黄丸、杞菊地黄丸など

肝陽上亢(かんようじょうきょう)証に対しては、たとえば、六味地黄丸(ろくみじおうがん)、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)などの漢方薬を用います。

  • ⑤釣藤散、抑肝散など

肝陽化風(かんようかふう)証に対しては、たとえば、釣藤散(ちょうとうさん)、抑肝散(よくかんさん)などの漢方薬を使います。

  • ⑥黄連解毒湯、三黄瀉心湯、清心蓮子飲など

心火(しんか)証に対しては、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)などの漢方薬を使います。

  • ⑦知柏地黄丸、黄連阿膠湯など

心腎不交(しんじんふこう)証に対しては、たとえば、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)、黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう)などの漢方薬を使います。

  • ⑧帰脾湯、甘麦大棗湯、酸棗仁湯、人参養栄湯、四君子湯、桂枝加竜骨牡蛎湯など

心血虚(しんけっきょ)証に対しては、帰脾湯(きひとう)、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)、酸棗仁湯(さんそうにんとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、四君子湯(しくんしとう)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などの漢方薬が有効です。

  • ⑨炙甘草湯、天王補心丹など

心陰虚(しんいんきょ)証に対しては、たとえば、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)、天王補心丹(てんのうほしんたん)などの漢方薬を用います。

予防/日常生活での注意点

日常生活では、緊張や不安を和らげる生活を心がけましょう。すぐにでも始められるのは、呼吸、姿勢、脱力です。呼吸は、ゆっくりと、長く、深く行いましょう。まずは朝起きた時と、寝る前、そして自分が緊張しているなと感じたときに、8息、ゆっくり深呼吸や腹式呼吸をするだけでも緊張が和らぎます。

姿勢も大事です。余分な力の入らない、よい姿勢を維持すると、体が休まり、心が落ち着きます。脱力にも心がけましょう。肩や、顔面、手などに余分な力が入っていませんか。

毎日の生活の中で、呼吸、姿勢、脱力に配慮することで、それが次第に習慣となり、「緊張しにくい体質」に近づいていくことでしょう。

 

(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆しました。日経DIオンラインにも掲載)

あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの体質により異なります。自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶ必要があります。どうぞお気軽にご連絡をください。

*執筆者紹介*

幸井俊高 (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。帝国ホテルプラザ東京内「薬石花房 幸福薬局」代表。薬剤師・中医師。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。「日経グッデイ」「日経DI(ドラッグインフォメーション)」にて漢方コラム好評連載中。


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自分に合った漢方薬に出会うには

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