1)漢方薬と西洋薬のちがい

漢方薬の特徴

漢方が何となくよさそうと思っても、どんな薬なのかよくわからない。そもそも西洋薬とどう違うのでしょうか。帝国ホテルプラザ内の「薬石花房 幸福薬局」中医師・幸井俊高先生にうかがいました。


ユキ:漢方って西洋薬と比べてどうなんですか?

先生:漢方薬は「病気の根本原因を改善する薬」、西洋薬は「症状を抑える薬」です。考え方が全然違  うんですよ。

ユキ:「病気の根本原因」って、細菌とかですか?

先生:外部からの原因には細菌などもありますが、同じ細菌に接して発病する人としない人がいますよね。また外からの攻撃が無くても身体機能に不調をきたして病気になる人もたくさんいます。私が言う「病気の根本原因」は、からだ全体のバランスの乱れのことです。

ユキ:バランスの乱れとは具体的にどんなことですか?

先生:食生活などの生活習慣、生活環境、ストレス、疲労や過労、化学物質など、少しずつでも毎日積み重なることによって、血液が汚れ、気(生命エネルギー)の循環が阻害され、余分な水分がたまり、いわゆる気・水・水が適正な状態からバランスを崩していきます。その傾向が進むと不調が表れ、細菌などに対する防御作用も弱くなります。漢方薬の目的は、崩れたバランスを本来の姿に戻す働きをサポートすることです。

ユキ:自分自身の力でバランスを直すことはできないのですか?

先生:もちろんできます。人間は本来、自然治癒力ともいわれるバランスを戻す力を持っています。生活習慣を改めストレスを軽減するなど努力を続ければバランスが少しずつ戻り不調は改善してきます。薬膳などの食養生も効果的です。しかしバランスの崩れが過度であれば漢方薬の力を借りないと難しいかもしれません。

漢方と西洋薬のメリット・デメリット、副作用

ユキ:西洋薬はあまりよくないのですか?

先生:そんなことはありません。西洋薬の働きはターゲットの生体反応を強制的・人工的にコントロールするものです。ですから即効性にすぐれ、すぐに処置しないと危険な場合や、生活に支障が出るほどのつらい症状のある人にはたいへん有用です。
しかし人間本来のバランス回復作用はないので、薬を止めると再発することもよく見られます。風邪を引いた程度なら、西洋薬で症状を抑えて仕事をしている間に、からだが一生懸命バランスの乱れを治します。
一方重い病気や慢性的な症状、体質虚弱などの場合は、西洋薬でつらい症状を抑えると同時に、生活習慣を改善したり、さらには漢方薬を併用したりと、根本原因のバランスを回復する努力を粘り強く行わなければ完治は難しいでしょう。西洋医のお医者様がご自身や家族のために漢方相談に見えることも珍しくありません。

ユキ:副作用についてはどうですか。

先生:西洋薬には目的以外の組織・機能に影響を及ぼす副作用が起こりがちなのは周知のことです。また化学合成された薬は栄養吸収できない異物なので役割を終えた後は排泄され、その過程で肝臓や腎臓に負担をかけます。
一方漢方薬は食物と同じく自然の産物が材料なので吸収されて体を滋養します。しかし使い方を誤ると有害にもなり得ます。たとえば熱がこもった人に温める薬を与え続けるとバランスを戻すどころかますます悪化させてしまいますよね。
この点からも、正しく患者さんの体質や状態を判断し、適切な薬を選べる知識を持つ専門家にみてもらうことが大切です。

ユキ:西洋薬と漢方薬、よく理解した上でうまく使いこなせるといいですね。ありがとうございました。

→ 基本2 漢方が効く症状

→ どうすれば、信頼できる漢方の専門家に出会えるのか