生理痛(月経痛)

漢方で生理痛(月経痛)は根本原因別に治す

漢方ガイドのマルガリータ・ユキです。生理痛(月経痛)について、帝国ホテルプラザ内の「薬石花房 幸福薬局」の中医師・幸井俊高先生にお話をうかがいました。

ユキ:生理痛がひどくて困っている方を何人も知っています。月経困難症と診断されている方もあります。生理のたびに鎮痛剤を飲んで痛みを抑えてやり過ごすばかりで一向に改善されず、ときには鎮痛剤がだんだん効かなくなり、何か本質的な改善をしたいと考えるようになった方も多いようです。漢方薬は生理痛に効きますか。

先生:はい、漢方薬は、血液の流れを改善したり、ホルモンバランスを調えたり、自律神経系を調整したりして、からだの内側から生理に関する悩みの根本原因を解決する薬なので、PMS、子宮内膜症などを含め、生理痛の改善に効果を発揮します。

ユキ:どのような漢方処方が生理痛に効くのでしょうか。

先生:この処方なら誰の生理痛にでも効く、という特定の処方はありません。漢方は根本原因に作用させて病気を治療する薬なので、おひとりおひとりの体質や生理痛の原因を把握し、それぞれにふさわしい処方を選ぶ必要があります。

ユキ:おなかが痛いというのは同じでも、原因はさまざまということですね。たとえばどのような原因がありますか。

先生:生理痛の原因としては、内分泌ホルモン系の失調や自律神経の失調、子宮発育不全、さらに心理的・精神的ストレスや冷え症、血流障害などがあげられます。また子宮筋腫、子宮内膜症、骨盤内炎症性疾患、子宮位置・形態異常など、器質的な疾患が原因となって生理痛が生じる場合もあります。これらによって気血(きけつ)の流れが停滞したり、それらの量が不足したりしたときに生理痛が生じます。

ユキ:気血の停滞や不足によって生理痛の痛みが生じているということですね。もう少し具体的に教えてください。

生理痛(月経痛)がひどい人のタイプと、ふさわしい漢方処方

先生:よくみられるのは、以下のタイプです。

(1) 血行の停滞が痛みの原因となっている「血瘀(けつお)」タイプの生理痛
生理が始まる1、2日前から下腹が張るような感じがあり、生理が始まると同時に下腹部が強く痛みます。経血は黒っぽく、レバー状の血のかたまりが出ます。生理痛は生理初日と2日目がつらく、出血量が減って血のかたまりが出なくなると痛みが軽くなり、楽になります。舌はやや赤黒く、少し紫色っぽく見えます。血瘀であっても下の(3)(4)タイプの場合もあります。

(2) 血の量が不足しているのが原因の「気血両虚(きけつりょうきょ)」タイプの生理痛
生理の後半、たとえば生理が始まって2、3日が経ってから下腹がシクシクと痛むタイプです。生理の量は少なめで、経血は淡赤色です。舌も白っぽい赤色をしています。血の不足とともに、疲れやすいなどといった気の不足が見られます。

(3) 冷えが原因で血行が悪化して痛む「寒凝(かんぎょう)」タイプの生理痛
寒邪(寒の邪気)の侵入によって血の流れが凝滞している状態です。痛みが激しいのも特徴です。一般に、温めると楽になります。生理中は寒邪の侵入にさらされやいので、冷えやすい方は注意が必要です。

(4) ストレスの影響で痛みが悪化する「気滞血瘀(きたいけつお)」タイプの生理痛
社会人になってから生理痛が重くなったなど、ストレス要因との関係が見られます。ストレスで気の流れが阻害され、それに伴って血流も鬱滞して血瘀となり、痛みが出ています。いらいら、不眠、頭痛、肩凝り、赤紫色の舌なども特徴です。

他に、例は少ないながら、灼熱感を伴うタイプや生命エネルギーが低下しているタイプなどもあります。

ユキ:どのような処方が用いられますか。

先生:どの処方がベストであるかは、詳しくお話をうかがってさらにきめ細かくおひとりおひとりの状態を判断した上でないと決められないのですが、代表的な処方を挙げておきます。カッコ内は該当するタイプです。

桂枝茯苓丸(1)、桃核承気湯(1)、芎帰調血飲第一加減(4)、四逆散(4)、十全大補湯(2)、四物湯(2)、補中益気湯(2)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(3)、折衝飲(1,4)、温経湯(3)、帰脾湯(2)、逍遥散(4)、血府逐瘀湯(1,4)

ユキ:いろいろあるのですね。たとえば桂枝茯苓丸が効かなかった場合でも、自分に合った処方が他にあるわけですね。各処方については、また別の機会にお話を聞かせてください。ありがとうございました。

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