桂枝茯苓丸は体力のある人に効くわけではない
漢方ガイドのマルガリータ・ユキです。桂枝茯苓丸について、帝国ホテルプラザ内「薬石花房 幸福薬局」の中医師・幸井俊高先生にお話をうかがいました。
桂枝茯苓丸の入手方法はこちら(保険適用など） → 漢方を手に入れる４つの方法
ユキ： 桂枝茯苓丸は、加味逍遙散、当帰芍薬散と並んで、PMS、生理痛、生理不順、更年期障害、不妊症など婦人科の疾患に対して使われることが多い漢方薬です。
調べてみると、当帰芍薬散は体力がない「虚証」、桂枝茯苓丸は体力のある「実証」、加味逍遙散はその中間の人によいという説明がいろいろなサイトに書いてありますが、自分の体力に応じて選べばよいということですか。
先生：漢方薬は、自分の体力に合わせて選ぶ薬ではありません。確かに桂枝茯苓丸はあまり虚弱な人には使いませんし、当帰芍薬散は作用が穏やかなので体力のない人にも使いやすい処方です。
しかしそれらが病気の治療に効果的かどうかは、全く別の話です。
ユキ：体力がある人のPMSや生理痛でも、桂枝茯苓丸では効かないこともあるということですか。
先生：はい。桂枝茯苓丸が効くのは特定のタイプの人に限られています。
ユキ：どのようなタイプに効くのでしょうか。
先生：桂枝茯苓丸が効くのは「血瘀(けつお)」証といって、血流が停滞しているタイプです。血の量に不足はないけれど流れが悪くなっている状態です。一時的な場合と慢性的な場合があります。
ユキ：一時的な場合とは？
先生：桂枝茯苓丸は外傷、打撲、手術による血流障害や一時的なうっ血による頭重や肩こりなどに効きます。
私は締め切りに迫られて長時間仕事をして頭が重くなったときや、パソコンに向かいすぎて肩甲骨のあたりがだるく重くなったときなどに飲むことがありますが、一服で頭や肩がすっきりと軽くなり、血行が改善されているのが実感できます。
ユキ：男女を問わず、そのような使い方もできるのですね。では桂枝茯苓丸が効く慢性的な血行障害にはどんな場合がありますか。
先生：桂枝茯苓丸はとくに下半身の血流停滞に有効なので、女性の生理の不調に使われることが多いです。骨盤内でうっ血が生じ、うっ血による下腹部痛が発生するケースです。
血流が停滞しているので押すと痛いのが特徴です。また、血液や体液の流れが停滞することにより、骨盤内に炎症や腫瘤（かたまり）が形成されやすくなります。その結果、子宮筋腫や子宮内膜症ができやすくなります。
ユキ：子宮筋腫や子宮内膜症には桂枝茯苓丸が効くということですか。
先生：患者さんが「血瘀(けつお)」証の場合はよいと思いますが、他の証の人もたくさんいらっしゃいますので、必ずしも効くとはいえません。私の経験では別の処方を選ぶケースの方が多いです。
桂枝茯苓丸が効く人の特徴
ユキ：桂枝茯苓丸が効くタイプの人にはどんな特徴がありますか。
先生：下半身の血行障害による下肢の冷え、静脈瘤、さらに上半身ののぼせ、頭痛、肩こり、それに自律神経失調症、高血圧なども多く見られます。その他、痔疾患、ニキビ、湿疹、じんましん、シミ、しもやけなどにもなりやすくなっています。
顔色がどす黒い、皮膚につやがない、色素沈着が生じやすい、唇や舌が紫色をしている、舌の裏の静脈が怒張している、などの症状を伴いやすいのも特徴です。男性の肩こりやニキビなどによく効くこともあります。
ユキ：桂枝茯苓丸が効くタイプは、いろいろな表れ方をするのですね。それにしても全く自分にあてはまらない、という方もあると思いますが。
先生：その場合はタイプが合っていない、つまり証の見立てが間違っているのでしょうね。同じ生理痛、子宮筋腫という病気であっても、証が違えば処方は異なります。処方の選択肢は広いので、ご自分にベストの漢方薬に出会うためには熟練した専門家に相談するのが一番よいと思います。
●●ユキの感想●●
桂枝茯苓丸には婦人科の症状だけでなく、肩こり、高血圧、肌のシミ、ニキビなどいろいろな応用範囲があってびっくり。でも一番大事なのは、自分が桂枝茯苓丸が効くタイプかどうかということみたい。このページが参考になれば幸いです。
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