蕁麻疹(じんましん)

漢方が効く蕁麻疹の4タイプ

漢方ガイドのマルガリータ・ユキです。蕁麻疹と漢方について、帝国ホテルプラザ内の「薬石花房 幸福薬局」の中医師・幸井俊高先生に、お話をうかがいました。

ユキ: 蕁麻疹は、かゆみが強く、全身に出ることも多いので、一時的であっても非常に不快なものです。蕁麻疹で漢方相談に見えるのはどのような方なのでしょうか。

先生:相談に見えるのは蕁麻疹が繰り返し出る、慢性蕁麻疹の方が多いです。食べ物、疲れ、緊張、汗、温度変化、気候など何らかの要因がきっかけになって出る人もいますが、引き金になる要因が明確に特定できない場合も多々あります。

ユキ:蕁麻疹が出やすい体質の方たちですね。そのような皆さんは、同じ体質なのですか。

先生:そうとは限りません。蕁麻疹が出やすくなっている体質的背景は人によって異なります。よく見られる4つのタイプ(漢方で「証(しょう)」といいます)と効果的な処方は以下のとおりです。

 どうすれば、信頼できる漢方の専門家に出会えるのか

蕁麻疹が出やすい4つの証

証と処方 蕁麻疹の特徴 他に出やすい特徴
湿熱(しつねつ)
体内に熱と湿気が蓄積
主な処方:
清上防風湯
小柴胡湯
黄連解毒湯
茵蔯五苓散
茵蔯蒿湯
膨らみをもって赤い蕁麻疹が地図状につながるかゆみが強く、ほてるような熱感アレルギー性蕁麻疹、機械性蕁麻疹、日光蕁麻疹、コリン性蕁麻疹、温熱蕁麻疹に多い 口がねばる口が苦い口が渇く食欲不振吐き気便秘あるいは下痢ねっとりとした便すっきりと排便しない尿の色が濃いイライラしやすい舌が赤い黄色い舌苔がべっとり付着
気滞血瘀(きたいけつお)
気と血の流れが悪い
主な処方:
加味逍遙散
四逆散
桂枝茯苓丸
蕁麻疹はやや黒っぽい赤色色素沈着が生じ肌が褐色やになったり紫のニキビ跡ストレスや精神不安定時に出やすい逆に緊張がとれて一安心したときに出る場合も夜間に出ることが多い下着で圧迫されるような場所にできやすい 肩こり生理痛ストレスの影響を受けやすい緊張しやすい暗紅色の舌
気血両虚(きけつりょうきょ)
気と血が不足
主な処方:
補中益気湯
四物湯
蕁麻疹の色は薄めの赤色疲れた時に出やすい もともと疲れやすく元気のないタイプ胃腸が弱い軟便ぎみ食欲があまりない生理の量が少なめ肌が乾燥気味でつやがない舌は赤味が薄く白っぽい
寒湿(かんしつ)
寒さと湿気に反応主な処方:
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
温経湯
寒冷蕁麻疹冷たい物に触れたり冷たい風にあたったりしたときに蕁麻疹が発生しやすい

先生:以上の4分類は大まかなもので、実際にはこれ以外の証であったり複数の証が重なっていたりして結果的に蕁麻疹という症状が現れていることも少なくありません。

上の分類に当てはまらない場合や飲んでいる漢方薬が効かない場合は、あなたにベストの処方を見つけるのが難しいかもしれません。そのような時は信頼できる漢方の専門家(中医師の資格を持つ薬剤師や医師)に相談するのが一番の近道です。

→ どうすれば、信頼できる漢方の専門家に出会えるのか

抗ヒスタミン剤はやめるべき?

ユキ:ひとことで蕁麻疹と言ってもいろいろな違いがあることがわかりました。タイプによって漢方の治療方針、使われる漢方薬が全然違うのですね。

先生:蕁麻疹の出やすい体質そのものを改善し、再発しないようにするのが漢方の目的なので、症状を抑えるために一律に使われる対症療法の抗ヒスタミン剤などとは発想が違います。

ユキ:抗ヒスタミン剤は止めた方がいいのでしょうか。

先生:自己判断でやめると症状を悪化させてしまうこともあります。漢方薬で体質を改善しつつ、出てしまった症状については西洋薬で落ち着かせる、というように併用するのが効果的と考えます。

蕁麻疹に効く漢方で他の不調も治る

先生:漢方では、皮膚の病気は体の内部から発生する病気としてとらえ、心身の不調を改善したり、免疫力を向上させたりすることにより、からだの抵抗力や自然治癒力を高め、蕁麻疹の改善を図ります。

蕁麻疹ができやすい根本原因である心身の内部状態を改善することにより、自然にもとの素肌に戻すように改善するわけです。

ユキ:蕁麻疹が出やすい体質の方は、漢方でじっくりと体質改善していくとよさそうですね。

先生:はい、蕁麻疹を治したくて漢方を始めて、気づいたら他の症状、たとえば口臭、便秘、生理痛などもすっかり治っていた、という嬉しい副次効果のご報告をいただくこともよくあります。体質改善の成果ですね。

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