ダイエットの美容漢方

自分のタイプに合った漢方薬でダイエット効果を確実に

漢方ガイドのマルガリータ・ユキです。漢方によるダイエットについて、帝国ホテルプラザ内の「薬石花房 幸福薬局」の中医師・幸井俊高先生に、お話をうかがいました。

ユキ:私の周りにも体重を減らしたい、余分な脂肪やむくみを取りたいと望んでいる人がとても大勢いらっしゃいます。ダイエットには様々なやり方がありますが、漢方にもダイエットの方法があるのでしょうか。

先生:漢方ではダイエットのことを「減肥」といい、ひとつの治療分野になっています。文字通り、余分な脂肪を減らすということです。食べ過ぎや運動不足を改めつつ、太りやすい体質そのものを漢方薬で改善し、「太りにくい体質」を作っていきます。

ユキ:「太りにくい体質をつくる」・・・とても魅力的な響きです。どんな漢方薬を飲めば太りにくい体質になれるのでしょうか。

先生:この漢方薬さえ飲めば誰でも痩せられる、という処方があるわけではありません。体重が減りにくい原因となっている体質は人によって違います。食欲が抑えられない、食事を減らしても太る、年齢とともに太り気味になってきた、脂肪太り、水太り・むくみ、ストレス太り、便秘、冷え症、疲れやすい、汗っかき、のぼせやすい、などなどです。まずは、おひとりおひとりの状態を丁寧に見極め、それぞれの原因に応じて改善作用のある漢方薬を選びます。

ユキ:脂肪太りの人には防風通聖散、水太りの人には防己黄耆湯がいいと聞いたことがあります。

先生:それだけでは大雑把すぎますね。また大手メーカーが、防風通聖散が肥満解消のための薬と宣伝するために、防風通聖散が合わない体質の人もダイエット目的で防風通聖散を飲み、その結果、試したけれど効かなかったり、かえって体調が悪くなったりする方は多いと思います。私の薬局ではひとりひとりの体質のタイプ(漢方で「証(しょう)」といいます)をしっかり把握し、数十種類の中からベストの処方を選んでいます。

ユキ:それだけ種類があるのなら、防風通聖散や防己黄耆湯など、よく知られた処方がぴったり合う人は意外に少ないのかもしれませんね。

先生:試した漢方薬が効かない場合は早めに専門家に見てもらった方が結局は早道だったということは、よくあります。

ユキ:太りやすい、あるいは体重が減りにくい人にはどんなタイプがあるのか教えてください。

先生:漢方ダイエットの視点から見た主なタイプ(証)は次の5つです。複合している場合や特定の症状が強い場合など個人差がありますから、実際どの処方がベストであるかの判断は複雑です。

(1)ストレス太りに多い「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証。身体の諸機能を調節する五臓の肝の気が滞りやすい体質です。脂肪を体内に蓄える機能が失調したり、食欲が必要以上に増進したりして、体重が増えます。ストレス太りに相当します。社会人になってから太り始めた人によくみられる証で、落ち込み、憂うつ感、残便感、赤い舌などの特徴もあります。生理前にむくむ、いらいらしやすいなどの症状が出ることもあります。肝気の流れを改善し、ストレス抵抗性を高める漢方薬が効果的です。
代表的な処方:四逆散、柴胡加竜骨牡蛎湯、大柴胡湯

(2)脂肪太りに多い「痰湿(たんしつ)」証。痰湿というのは体内に溜った過剰な水分や湿気のことです。脂肪も含まれます。これが原因で体重が増加している場合がこの証です。痰湿が体内に停滞すると、体重の増加以外にも、ポリープや腫瘤、できものができやすくなったり、女性では子宮筋腫や卵巣嚢腫が生じやすくなったりもします。痰湿の影響で、身体が重だるい、胸苦しい、胃がつかえる、頭がぼーっとする、などの症状がよくみられます。胸苦しさを感じることもあります。舌には白い舌苔がべっとりと付着しています。この場合は、痰湿を取り除く漢方薬で体質を改善していきます。
代表的な処方:平胃散、二陳湯、防風通聖散

(3)疲れやすい人に多い「脾気虚(ひききょ)」証。脾は五臓の一つで、消化吸収や代謝をつかさどる機能です。この機能が弱い体質であるために代謝が悪く、体重が減りません。疲れやすい、多汗、ぽってりとした白っぽい色の舌、湿っぽく白い舌苔などは、この証の特徴です。脾の機能を補う漢方薬で、体重増加を解消していきます。
代表的な処方:六君子湯、防已黄耆湯、補中益気湯

(4)下半身太りに多い「腎陽虚(じんようきょ)」証。水液をつかさどる五臓の腎の機能が低下し、さらに冷えを伴う体質です。腎機能の低下により、水分が滞り、水太り、下半身太りの状態になります。下半身にむくみと冷えがあり、夏のクーラーが苦手です。のぼせはありません。白っぽい色の舌をしています。身体を温めて腎機能を強める漢方薬を使います。
代表的な処方:八味地黄丸、牛車腎気丸

(5)血行不良でますます痩せにくい「血瘀(けつお)」証。血流が鬱滞しやすい体質です。食べ過ぎや飲み過ぎで体重が増加し、さらに肝臓に負担がかかっているという場合があります。顔色がどす黒い、皮膚につやがない、色素沈着が生じやすい、唇や舌が紫色をしている、舌の裏の静脈が怒張している、などの症状を伴いやすいのも特徴です。そういう場合は、血行を改善することにより肝臓への負担を和らげるため、血瘀を改善する漢方薬を用います。
代表的な処方:桃核承気湯、桂枝茯苓丸

ユキ:漢方ダイエットで効果を出すには、まず体質をよく見極め、ベストの処方を選ぶことが大切であることがよくわかりました。結局は専門家に相談する方がよさそうですね。

先生:漢方薬を用いるとともに、生活習慣の改善も必要です。人は誰でも20歳代を超えると、年齢とともに機能が衰えていくものです。たくさん食べていないつもりでも、若い頃と同じ量を食べていれば、体重は増えます。自分の年齢や、運動不足かどうかなど、よく見なおして改善していくことで、ダイエット効果も高まります。

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