2)漢方はこんな人・症状に効く

漢方が効く人・症状

薬石花房 幸福薬局」中医師・幸井俊高先生にうかがいました。

西洋医学vs漢方それぞれの治療範囲

 ユキ:漢方が効く人や症状にはどんな特徴がありますか?

先生:漢方薬の目的は、崩れたバランスを本来の姿に戻すからだ本来の働きをサポートすることです。

病院で診断される病名とは、バランスが崩れたために表れる症状のうち、特定の定義にあてはめられるものであると考えれば、どんな病名がついていても漢方薬で対応できるということがご理解いただけると思います。

さらには検査で「異常なし」の症状や、病気とみなされない不定愁訴、不眠・疲労などの不調にも同じように対応できるのです。

まとめると次のようになります。

西洋医学と漢方の治療可能範囲

体の中のバランスの崩れ
西洋医学の定義に当てはまる部分

検査の数値その他の根拠に基づく医師の所見により病気と診断される

西洋医学で病気と診断されない

検査で異常なし

「疲れ」「年のせい」「性格のせい」「気にしすぎ」など

西洋医学で治療が可能
漢方で治療が可能

 ユキ:漢方の守備範囲が広いのはどうしてですか。

先生:西洋医学は、病気になってから生じた症状を抑える対症療法が主流であるのに対し、漢方は病気の根本原因そのものを改善していく医学です。

「未病」といって病気と診断されるまでに至っていない状態でも、体内にバランスの崩れがあればそれを見つけて治療ができるので、範囲が広くなります。

未病がさらに悪化すると病気になってしまうわけです。

 ユキ:どんな不調でも漢方の方が効果的なのでしょうか。

先生:そんなことはありません。西洋医学と漢方のそれぞれの得意分野があり、メリット・デメリットを別ページにまとめてあります。

ぜひご参照ください。  → 漢方薬と西洋薬のちがい

 

漢方が特に効く人・症状の4ケース

 ユキ:西洋医学に対して、特に漢方が推奨されるのはどのような人・症状ですか。

先生:4つのケースがあります。

(1)未病の人(検査で異常なし)
(2)西洋医学で改善しない人
(3)心身ともに症状が出ている人
(4)病気予防、老化防止、美容が目的の人

以下に詳しく説明します。

(1)未病の人
→ 漢方で自然治癒力をアップ

先生:まず、不調に悩みながらも、病院で治療してもらえない「未病」の人です。

自覚症状が重くても検査などで原因が特定できないと、西洋医学では効果的な治療方針がたてられません。

これに対して漢方では根本原因を見極める特有の理論体系を持っており、問診や観察に基づいてふさわしい処方を決めることができます。

 ユキ:「未病」にはどのような症状がありますか。

先生:不安感、過緊張、不眠、イライラ、摂食障害、頭痛、疲労感、胃痛、多汗、肌荒れ、風邪をひきやすい、動悸、吐き気、口臭、体臭、肥満、夏バテ、めまい、耳鳴り、胸やけ、便秘、下痢、冷え性、肩こり、腰痛、のぼせ、おなかの張り、胃のつかえ感、食欲不振、口内炎、舌痛症、ドライアイ、眼精疲労、ドライマウス、むくみ、痩せすぎ、尿失禁、健忘、髪の悩み、勃起不全、その他多くの場合があります。

こうした症状のうち、病院で調べても背景となる病気が見つからなかったケースです。

このような場合は根本原因に働きかける漢方薬を服用するうちに症状は次第にやわらぎます。

人間がもつ免疫力や自然治癒力、つまり崩れたバランスを戻す力を漢方生薬で高めることにより根本治療を行うのが漢方なのです。

 

(2) 西洋医学で改善しない人
→ 漢方で治療効果をアップ

先生次に、西洋医学の治療を長く続けても快癒しない場合も漢方が効果的です。

これらのケースには、皮膚の病気、アレルギー、女性特有の症状、内科の病気、精神や神経に関するものなどが多くみられます。がん治療の副作用で苦しんでいる人も同様です。

具体的には、アトピー性皮膚炎、花粉症、乾癬、気管支喘息、不妊症、子宮筋腫、子宮内膜症、生理痛などの月経困難、更年期障害、線維筋痛症、関節リウマチ、糖尿病、パニック障害、化学物質過敏症、高血圧、心不全、貧血、慢性疲労症候群、突発性難聴、副鼻腔炎、歯周病、甲状腺の病気、逆流性食道炎、過敏性腸症候群、脂肪肝、前立腺炎、膀胱炎、痔、胃・十二指腸潰瘍、下肢静脈瘤、肝炎、前立腺炎、男性不妊、各種のがん、その他です。

 ユキ:慢性的な症状に、なぜ漢方が効果的なのですか。

先生:対症療法が主体の西洋医学的治療は、症状をたたくことに優れ、根本原因である体質的なバランスを修復するという発想とは違います。

また弱ったからだを滋養したり、元気づけたりする力もありません。

治癒の力は、患者の内部から湧いてくるものなです。

漢方薬は患者自身の自然治癒力を高め、からだ全体のバランスが調う方向に働くので、このようなケースに漢方を併用すると症状改善に非常に効果的なのです。

 

(3)心身ともに症状が出ている人
→ 漢方で統合的に治療

 ユキ:漢方は精神的な症状にもよいと聞きますが。

先生:はい、西洋医学と異なり、漢方ではからだと心を別々にとらえずに、総合的に見ます。

肉体的な症状と精神の状態が関係していることは皆さんも実感があると思いますが、漢方では精神と肉体を合わせて治療する理論体系をもっています。というよりむしろ、切り離して考えることができません。

たとえば便秘の背景にストレスがあれば、「気」をめぐらす薬を用いて精神をやわらげて便秘を改善したり、不安感の原因が「血」の不足にあるならば「血」を補う処方によって不安感を解消する、といった具合です。

また便秘治療で漢方薬を服用したところ、便秘が治ると同時に口臭もなくなった、肌の調子もよくなった、イライラしなくなったなど、心身全体に嬉しい変化が表れることが漢方ではよくあります。

実は同じ根本原因からさまざまな症状などが出ていたからです。

ですから心身ともに不調、あちこち具合が悪い、などの人は病院の診療科を渡り歩くばかりでなく、漢方治療で根本原因に働きかけるのが効果的かもしれません。

 

(4)病気予防、老化防止、美容、ペット
→ これらの目的も日々の漢方で

 ユキ:他にも漢方が効果的な場合はありますか。

先生:病気にかからないように体調を良好に保ちたい方が継続的に続けていらっしゃいます。

また美白やダイエットなどの美容や、アンチエイジングの目的で続けていらっしゃる方も多く、若さと健康、美しさを保つために日常的に漢方を取り入れていらっしゃいます。

また、大切なペットのために漢方をお求めになる方もあります。

 

漢方が効く人・症状のまとめ

(1) 未病の人 漢方で自然治癒力をアップ
(2) 西洋医学で改善しない人 漢方で治療効果をアップ
(3) 心身ともに症状が出ている人 漢方で統合的に治療
(4) 病気予防、老化防止、美容が目的の人 漢方を生活に取り入れて若さと健康を維持

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