便秘

漢方薬で便秘体質そのものを改善、下剤をやめる

漢方ガイドのマルガリータ・ユキです。便秘について、帝国ホテルプラザ内の「薬石花房 幸福薬局」の中医師・幸井俊高先生に、お話をうかがいました。

ユキ:次のような便秘の悩みをよく聞きます。漢方薬は効くでしょうか。

・病院に行くほどではないが便秘でお腹の張りや肌荒れなど不快な症状が続く。

便秘によいという食品やサプリを試したりするものの、あまり効果が感じられない。

下剤などの便秘薬はあまり使いたくない。

・便秘薬・下剤がだんだん効かなくなり、たくさん飲まないと効かなくなってきた。

先生:便秘の改善は、漢方の適切な処方によって可能で、下剤をやめることもできます。

下剤は対症療法的に排便させる薬であり、体質を改善する働きはありません。下剤だけでは便秘は治らず、薬に頼り続けることになります。慣れが生じてだんだん効かなくなることもあります。

一方、漢方では便秘体質そのものを漢方薬で改善して便秘の解消を進めます。下剤を併用することもありますが、便秘体質が改善されるにしたがって量や使用頻度を減らしていきます。

下剤をやめても自然な排便ができるようになれば、便秘体質の改善完了です。

ユキ:適切な漢方処方にはどんなものがありますか。漢方薬を試したけれど効かなかった、あるいは服用したらひどい下痢になって続けられなかったという話も聞きます。

 

自分のタイプに合わなければ効かない、悪化の恐れも

先生:誰にでも合う漢方薬がないのが難しいところです。便秘体質にはいろいろなタイプがあり、自分に合った処方を選ばなければ体質改善効果はなく、逆に悪化させてしまう恐れもあります。

→ 信頼できる漢方相談の選び方

ユキ:便秘体質のタイプと特徴を教えてください。

先生:だいたい次の5つの便秘体質があります。

(1)「熱秘(ねつひ)」・・・熱がこもっている人の便秘

便秘のタイプ 背景・出やすい症状
熱がこもりやすい体質で、消化器系に熱邪が停滞すると水分が消耗されて便が硬くなり、便秘に。

便は硬く乾燥しており、おなかが張りやすく、くさいガスがよく出る。

脂っこいものや味の濃いもの、アルコール類、辛いもののとりすぎ。

尿の色が濃い顔がのぼせて赤くなりやすい口臭が気になる舌は赤い黄色い舌苔が付着

代表的な漢方処方:麻子仁丸、調胃承気湯、桃核承気湯、茵蔯蒿湯

 

(2) 「気秘(きひ)」・・・気の流れが滞った人の便秘

便秘のタイプ 背景・出やすい症状
気の流れがよくない体質で、そのために消化器官の蠕動、輸送機能がスムーズでなくなり、便秘に。

便が細く、ときに切れ切れになり、すっきりと排便せず、残便感がある、生理前に便秘が悪化する。

おなかが張って、ときに痛む、ガスがたまりやすく、げっぷやガスが出ると楽になる。

下剤を飲むとおなかが痛くなる。

環境変化などのストレス、緊張、不安で引き起こされることが多い。

怒りっぽくいらいらするため息が多い生理痛   

代表的な漢方処方:四逆散、加味逍遙散、大柴胡湯

(3)「気虚秘(ききょひ)」・・・気が不足した人の便秘

便秘のタイプ 背景・出やすい症状
気(エネルギー)が不足していて、下腹に力が入らず排便できない状態。

便意がありトイレに行っても自然には排便せず、いきまないとなかなか出ない。

疲れがひどい時は特に出にくくなる。

消化吸収力も弱い場合が多いため軟便がち。

下剤を使うと、腹痛とともに激しい下痢に見舞われ、ときに水様の便になる。

虚弱体質や慢性疲労時のほか出産後など。

疲労感元気がない食欲不振舌は白っぽい

代表的な漢方処方:補中益気湯

 

(4)「血虚秘(けっきょひ)」・・・血が不足した人の便秘

便秘のタイプ 背景・出やすい症状
血(けつ)(栄養と水分をたっぷり含んだ滋潤成分)が不足しているために大腸が潤わず、便が硬くなる。

ウサギの糞のようにコロコロした便。

生理後に便秘が悪化しがち。

生理周期が不安定、生理の量が少なく期間が短い、経血が淡紅色、多汗、頭痛、髪のつやがない、爪が割れやすい、目が疲れやすい

代表的な漢方処方:潤腸湯

 

(5)「冷秘(れいひ)」・・・冷えた人の便秘

便秘のタイプ 背景・出やすい症状
体を温めるエネルギーが失われたために腸も冷えて機能が低下し、排便が困難に 寒さ、老化、虚弱体質((3)の気虚秘にさらに冷えが加わった状態)

代表的な漢方処方:八味地黄丸

 

自分の体質にあう処方や食べ物が大切

ユキ:便秘といってもいろいろな原因があるのですね。熱によるものと冷えによるものなど、逆のケースもありますから、タイプに合わない漢方を使うと悪化するというのもうなずけます。下剤をやめるどころではありません。

先生:食べ物でもそうです。たとえばバナナは熱を冷まし腸を潤す食品ですから、(1)の熱秘の人にはとてもよいのですが、(5)冷秘の人にはかえってよくありません。便秘によいというゴボウなど食物繊維が豊富な食品も、(2)気秘の人の場合はかえって気の流れをつかえさせてしまうのでよくありません。

ユキ:テレビなどで「△△は便秘にいい」という話題が時々出ますが、体質による違いが考慮されることはありませんね。効く人もいれば効かない人もいるはずなのに。

先生:いいと言われて一生懸命に食べて、却って悪くしてしまうのは悲しい話です。効き目がなければ集中的に食べるのは止めた方がいいでしょう。

ユキ:漢方の場合は体質を見極めて処方していただけるので安心ですね。

先生:はい、信頼できる漢方の専門家にみてもらうのが一番確実です。市販の漢方薬もいろいろありますが、友達の便秘が治った漢方が自分にも効くとは限らないので注意してください。

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