4)副作用・飲み合わせ・服用期間

漢方ビギナーにとって気になる副作用、飲み合わせ、服用期間について「薬石花房 幸福薬局」中医師・幸井俊高先生にうかがいました。

漢方の副作用

ユキ:漢方には副作用がありますか。 

先生: 使い方を間違わなければ副作用はほとんどない、と言うことができます。中医学で伝えられてきた処方は、古くは2000年にも及ぶ長い年月にわたって臨床現場で使われ検証を重ねてきたわけですから、その有効性や安全性についてはまず問題がないといえるでしょう。

ユキ:1996年に「小柴胡湯」の重篤な副作用が報道されましたが。

先生: 漢方では同じ症状が出ていても同じ薬を出すとは限りません。その人の体質、体力やその時の体の中の状態を「証」といい、その証に基づいて処方を選びます。ですから証を把握せず、あるいは見誤ってしまうと、その人に望ましくない作用をもたらす薬を出してしまうこともあるかもしれません。

小柴胡湯の件は、当時慢性肝炎に頻用されていた小柴胡湯エキスを、漢方に精通していない医師が証を無視して病名だけで判断して処方していたのが原因です。信頼のおける漢方の専門家にはあり得ないことです。

ユキ: 証をまちがえれば悪い作用も出るということですね。

先生: 例えば温めるか冷やすか、補うのか捨てるのか、乾かすのか潤すのか、逆の薬を使えばバランスを戻すどころか悪化させてしまいます

ユキ: 正しく証に合った薬を出してもらうにはどうしたらよいですか。

先生: 主訴だけでなく幅広く身体の状態について時間をかけて問診した上で、漢方の観点からあなたの心身がどのような状態になっているかを分かりやすく説明できる先生の薬であれば安心だと思います。

納得のいく問診や詳しい説明なしに出された漢方薬は、合っていないと感じたらやめた方がいいでしょう。

→ どうすれば、信頼できる漢方の専門家に出会えるのか

漢方の飲み合わせ

ユキ: 2種類以上の漢方薬を飲む場合もあるのでしょうか。一緒に飲んではいけない組み合わせはありますか。

先生: 西洋薬のように症状に合わせて何種類も処方することはまずありませんが、2種類ぐらい組み合わせた方がよい場合もあります。患者さんの状態と治療方針によっておのずと、最も効果的で無駄の無い薬の組み合わせと分量に決まってきますから、ひとつの治療方針の中で飲み合わせを心配する必要はありません。ですから、できれば一人の信頼できる先生を決めた方がいいでしょう。

複数の先生から漢方が処方された場合や、自己判断で漢方薬を買う場合は処方同志で薬効が重複したり、効果を打ち消し合ったり、一定の生薬の服用量が多くなりすぎて副作用が出たりすることもありますから、漢方の専門家のアドバイスを求めた方がいいと思います。

ユキ: 西洋薬との飲み合わせはどうですか。

先生:私の薬局では、どんな西洋薬を飲んでいらっしゃるかを必ずうかがい、それを考慮に入れて漢方の処方を決めています。飲み合わせの可否はケースバイケースなので、処方する医師や薬剤師に相談してください。

ユキ:サプリなどの健康食品と併用するのはどうですか。

先生:それも内容次第ですね。個々のケースで判断することになります。

漢方の服用期間

ユキ:漢方は長いこと飲み続けなければならないのでしょうか。

先生:必ずしもそのようなことはありません。病気や症状の根本原因が改善されれば、少しずつ漢方の服用量を減らし、様子をみながら服用をやめていただくのが一般的です。根本原因を作ってきた生活習慣も同時に改善できればさらに万全です。生活習慣がそのままだと、しばらくたつとまた同じ症状が出て、また漢方を飲むということになりがちです。

ユキ:長年にわたって飲んでいらっしゃるかたもあるようですが。

先生:成人病やがんなど治りにくい持病がある方が病気の悪化を防ぐために漢方を飲む場合、仕事の関係で食生活を変えられない方などが体調悪化を防ぎたくて漢方を飲む場合などは、常備薬のように考えて飲み続ける方が少なくありません。また漢方を病気の予防健康維持アンチエイジング美容などの目的で習慣的に続けていらっしゃる方もあります。

ユキ:短い期間では効果がないのですか。

先生:短い期間に劇的な効果が出て驚かれることも時々あります。慢性疾患の場合、私の薬局では最初は2週間試していただくのが標準です。2週間で劇的な効果が表れなくても、その時点で「何となくよさそう」と感じられる方は継続して注文されます。それを何度か繰り返し、ある時ふと気づくと症状がずいぶん楽になっている、あるいは消えている、さらには他の不調までもが治っている、というケースが多いです。

ユキ:わかりやすい解説をありがとうございました。

→ 基本5 どうすれば、信頼できる漢方の専門家に出会えるのか