3)漢方を入手する4つの方法

漢方の4つの入手方法を比較

漢方ガイドのマルガリータ・ユキです。漢方薬を試したいと思っても、さてどこへ行けばいいのか迷いますよね。費用は?保険は?煎じ薬とエキス剤(粉薬)はどっちがいい?そんな疑問にお答えします。(監修「薬石花房 幸福薬局」中医師・幸井俊高先生)

信頼できる漢方相談の選び方

漢方薬を手に入れるには次の4つの方法があります。

A 病院で医師が保険診療で処方する漢方

B 病院で医師が自由診療で処方する漢方

C 漢方専門薬局で薬剤師が処方する漢方

D ドラッグストア等で自由に買える漢方

以下それぞれにメリット・デメリットを挙げて比較します。

A 病院で医師が保険診療で処方する漢方

メリット デメリット
◎保険が効くので値段が安い。目安は1か月5,000円程度。

◎西洋医学中心にして漢方で補足するという治療方針が可能。

◎漢方知識を専門に習得した医師のもとに行けば適切な処方が期待できる。

エキス剤が主流で、より効果が高いとされる煎じ薬はほとんど使われない。

漢方の専門知識のない医師が処方することが多く、適応の制約もあるため、本来ベストの処方が選ばれないことが少なくない。

▲診療時間が短く、じっくり話を聞いてもらえない。

何より便利なのは、行きつけの医療機関などで処方してもらえ、保険が効くので値段も安く、気軽に始められる点です。

西洋医学の治療をしつつ補足的に漢方を使い、治療効果を高めるという手法が可能なのも大きな利点です。

一方で、漢方メインで治療していきたい人には保険診療はあまりおすすめできません。

まず保険診療ではエキス剤(ツムラなどの顆粒状の漢方薬)が主体で、より効果が高い煎じ薬はほとんど用いられません。

また専門的な漢方の知識を持たない医師が処方することが多いため、適切な処方が選ばれず、効かない薬を飲み続けていたというケースもよく見られます。保険診療では適応の制約もあるため、使いたい処方が選べない場合もあります。

漢方の処方をするためには時間をかけて問診し、患者の「証(しょう)を見る」(症状の背景にある体質や根本的な問題を見極める)というプロセスが必要なのですが、知識と時間の点で、そこまで対応できる医師は多くありません。

保険適用で適切な漢方処方を望むなら、少なくとも漢方を診療科(のひとつ)として掲げている医療機関を探して行くべきです。

保険診療による漢方のデメリットについては、別ページで詳しく説明しています。

保険適用の漢方の3大デメリット

B 病院で医師が自由診療で処方する漢方

メリット デメリット
◎西洋医学と漢方を連携させた治療が期待できる。

◎専門知識に基づいた適切な漢方処方が可能。

◎良質の生薬を用い、治療効果が高い煎じ薬の提供が可能。

保険が効かないので値段が高い。目安は1か月2~4万円だが処方による。

▲漢方に力を入れている医療機関が比較的少ない。

大学病院などは待ち時間が長い。

自由診療は保険が効かないため値段が高くなりますが、保険制度の制約に縛られずに最も適切な処方を選び、自由に質の高い材料を使えるので、より高い治療効果が期待できます。

自由診療の漢方治療で長年の実績をもつ北里大学の漢方鍼灸治療センターは、自由診療の理由を次のように記しています。

「漢方治療で最も大切なものの一つが漢方生薬です。ところが、保険診療では生薬の品目数が制限されており、また高品質な漢方生薬を使用することが出来ません。
当センターでは、個々の患者様に処方された漢方薬が望ましい治療効果を発揮できるように、高品質かつ豊富な漢方生薬による自由度の高い治療を実施しております。 より治療効果を上げるために、各種の制約から解き放たれた結果が自由診療という診療形態となっているのです。」(【当センターの特徴】漢方鍼灸治療センター|北里大学東洋医学総合研究所 (kitasato-u.ac.jp)

大学病院で漢方の自由診療を行っているのは北里大学の漢方鍼灸治療センターのほかにも、以下のところなどがあります。

近畿大学東洋医学研究所
千葉大学柏の葉診療所東洋医学センター

病院であれば西洋医学的な検査や治療と連携できる点もメリットです。

個人が開業している医院でも自由診療を行っているところがありますが、ネット検索で見るとこころ、漢方治療を主軸にしている医院は薬局とくらべてかなり少ない印象です。中には不妊治療など特定の分野に特化しているところもあります。

 

C 漢方専門薬局で薬剤師が処方する漢方

メリット デメリット
◎漢方の専門知識に基づいた適切な処方が可能。

◎良質の生薬を用い、治療効果が高い煎じ薬の提供が可能。

◎カウンセリングが充実し、時間をかけてじっくりと話を聞いてもらえる。

◎比較的数が多く、雰囲気やサービス内容、価格設定などが多様なので、自分の好みのところを選べる。

値段が高い。目安は1か月3~5万円だが、価格設定は薬局によってかなり異なる。

 

漢方相談を専門とする薬局は、大手チェーンから街中の個人の薬局まで数多くあります。

共通するのは、中医師など漢方の高い専門知識を身につけた薬剤師が時間をかけて相談に乗り、漢方の理論に基づき最適の処方を選んでくれる点です。

また煎じ薬を扱うところも多いので、煎じ薬を試したい場合は薬局が便利です。

漢方薬局は数が多いだけでなく、中身もさまざまです。

選ぶ基準のひとつは価格設定です。漢方薬の原料である生薬の価格は、同じ生薬にも産地の違いなどでランクがあり、薬効の高いものが高価になっています。

したがって良質の生薬を使えば漢方薬の価格は高くせざるを得ませんが、その分高い効き目が期待できます。どのあたりの原料を使うかによって価格帯はかなり変わってきます。

ただ通常は、十分な治療効果を出すために極端に高い生薬が必要なわけではありません。重篤な症状の場合は「治るならいくらでも払う」という心理になりがちですが、あまり高額な場合は落ち着いて、別の薬局でも相談してみるとよいでしょう。

また原価を反映させると処方によって値段が異なり、最初にいくら請求されるかわからない、処方が変わったら値段が高くなったなど、患者側の予算が立てにくい場合もあります。

そのような心配がないよう、処方内容に関わらず一日分の薬代を一律にしているところもあります。

一方、かなり安い値段をつけているところは、立地や固定費にメリットがあったり営業努力で良質の薬を安く提供できているのかもしれませんが、一方では、品質の劣る材料を使っている可能性もあります。本当のところはわからないので、口コミなどで効果のほどを確認した方がよいでしょう。

どうすれば、信頼できる漢方の専門家に出会えるのか

 

D ドラッグストア等で自由に買える漢方

メリット デメリット
◎自分に合う薬が決まっていれば一番簡単。

◎店頭に行かずネットでも入手可能。

◎値段が比較的安い。目安は1か月5,000円~。

◎ドラッグストアでも漢方の知識の深い薬剤師がいれば、ある程度相談できる。

▲店にいる薬剤師があまり漢方に詳しくない場合、適切なアドバイスが得られない。

処方箋なしに買える一般用医薬品の漢方薬であるため、医療用より容量が少なく効果はゆるやか。

自分に合うとわかっている漢方薬であればドラッグストアやネットなどで買うのが手軽です。

けれど、「友達に勧められた」「雑誌に書いてあった」などの動機で買うのはおすすめしません。同じような症状が出ていても、効く薬はその人の証(体質やタイプ)によって異なり、処方が違えば全然効かないからです。

ただドラッグストアにも熱心に漢方を勉強している薬剤師がいる場合もあるので、相談してみて納得がいけば試してもよいでしょう。

また、処方箋なしで買える一般用医薬品は安全性のために保険調剤で出される医療用よりも容量が少なくなっています。症状が重い時などは効き目が弱いと思われます。

 

4つの入手法はどんな人にお勧めか

以上、漢方を手に入れる4つの方法のメリット・デメリットを説明しました。

それぞれどんな人におすすめか、ポイントをまとめてみます。

A 病院で医師が保険診療で処方する漢方 ・西洋医学の補足として漢方を取り入れたい人

・保険で安く漢方治療を受けたい人
(ただし漢方専門の医師がいる医療機関)

B 病院で医師が自由診療で処方する漢方 ・より効果の高い漢方薬を求め、西洋医学的な治療との連携が必要な人

・保険調剤の漢方が効かなかった人

C 漢方専門薬局で薬剤師が処方する漢方 ・より効果の高い漢方薬(特に煎じ薬)を求め、充実したカウンセリングを望む人

・保険調剤の漢方が効かなかった人

D ドラッグストア等で自由に買える漢方 ・自分に必要な漢方薬がわかっている人

・症状が比較的軽い人

・体調維持などのためサプリ感覚で漢方を日常的に取り入れたい人

信頼できる漢方の専門家に出会うには