胃・十二指腸潰瘍

漢方では一人一人の潰瘍の原因を根本から改善、再発防止

胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、本来、食物を消化する胃液の強力な消化作用によって、胃または十二指腸自体がおかされる病気です。

粘膜に対する攻撃因子と防御因子のバランスが崩れて攻撃因子が強くなりすぎた結果、過剰な胃酸やペプシンにより胃・十二指腸が侵食され、潰瘍が生じた状態です。

特に精神的ストレスによる胃酸の過剰な分泌や非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)などの西洋医薬品の影響で攻撃因子が増強すると防御因子が胃壁を守りきれず、潰瘍になります。

また、胃潰瘍患者の7090%はピロリ菌感染者といわれており、ピロリ菌によって粘膜を防御する力が弱まることがわかっています。しかしピロリ菌がいなくても胃潰瘍になる人や、ピロリ菌がいるのに胃潰瘍にならない人もいます。

胃・十二指腸潰瘍によくみられる症状は、空腹時あるいは食事中や食後の心窩部痛(みぞおち付近の痛み)、胸やけ、悪心、嘔吐、背痛、そして吐血や下血という出血などです。

(症例紹介ページは こちら


◆西洋医学は対症療法


西洋医学では、
H2受容体遮断薬(H2ブロッカー)やプロトンポンンプ阻害薬(PPI)などの胃酸分泌抑制薬や、粘膜抵抗強化薬スクラルファートなどの防御因子強化薬で治療にあたります。

ピロリ菌が検出された場合は抗生物質や胃酸分泌抑制薬を使って除菌します。

しかし根本原因に対しては何ら改善を加えませんので、薬をやめると再発します。胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発率が高い(治癒後2年で65~75%が再発)のはそのためです。


◆漢方は根本治療なので再発が防げる


一方、漢方では、一人一人の潰瘍の原因を根本から改善し、再発を防ぐことを目的とします。

たとえば、胃酸が過剰に分泌されている、など攻撃因子が強い場合は、胃酸が分泌されすぎない体質にしていくなど、攻撃因子を弱めます。あるいは、粘液が少ない、など防御因子が弱い場合は、粘液がじゅうぶん分泌される体質にしていくなど、防御因子を強めます。

漢方薬は、肉体だけでなく精神に働きかける作用も強いので、ストレスに強い体質に改善していくことで胃潰瘍の再発を防ぐ、ということもできます。

具体的には次のような場合に漢方が効果的です。

ピロリ菌を除去したが完治しない
胃潰瘍の薬を飲むのをやめると再発する
胃潰瘍の再発を繰り返すので根治したい

◆胃潰瘍・十二指腸潰瘍になりやすいタイプ・・・あなたはどれ?

<体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます>

漢方では、胃潰瘍の根本的な原因は六腑のひとつである胃の機能(胃気)の失調や陰液(胃陰)の不足にあると捉えており、漢方薬でそれらを正常化させることにより、胃潰瘍の根本治療を行なっています。

(1)「胃気虚(いききょ)」証

食後の胸やけや、食欲不振、胃のつかえ、少ししか食べられない、吐き気、嘔吐、疲れやすい、などの症状がみられるならこの証です。

胃の機能(胃気)が弱っている体質です。胃の消化能力や蠕動運動が弱まっており、いつまでも食べたものが胃の中に残り、食中や食後に胃酸が分泌され続けるので、胃潰瘍が発生します。

慢性的な体調不良や疾患、過労、加齢などにより、この証になります。免疫力の低下と関係が深いので、ピロリ菌の繁殖や活性化とも関係があります。

→ 胃気を下降させて胃の機能を立て直す漢方薬を用いて胃潰瘍を治療します。

(2)「胃陰虚(いいんきょ)」証

心窩部の鈍痛や、吐き気、乾嘔(からえずき)があるようならこの証です。

胃の陰液(胃陰)が不足している体質です。陰液とは人体の基本的な構成成分のうちの血・津液・精のことで、胃潰瘍になる場合は、粘液が不足している体質に相当します。

ほかにも、口の渇き、口の中が粘つく、唾液が少ない、などの燥証(乾燥による症状)があらわれます。

陰液が少ないために相対的に熱が余り(虚熱)、乾嘔のほかに、胸やけ、口臭なども生じます。防御因子が弱いタイプの胃潰瘍です。

→ 胃の陰液を補う漢方薬で、胃潰瘍を治していきます。

(3)「胃熱(いねつ)」証

胃の灼熱感が強く、心窩部痛が繰り返し生じるようならこの証です。

胃から上部の消化器官で炎症を起こしやすい体質です。刺激物や、脂っこいもの、味の濃いものをたくさん食べたり、あるいはアルコール類を多飲したりすると、それらが原因で熱邪が生じて胃熱となり、胃粘膜が侵食され、胃潰瘍が生じます。

胸やけ、呑酸、口臭、口の渇き、吐き気、嘔吐などの症状も生じます。

アルコール類や刺激物の影響で夜中にも胃酸が過剰に分泌されるので、朝起きたときに心窩部痛や胸やけがします。攻撃因子が強いタイプの胃潰瘍です。

→ この証に対しては、胃熱を冷ます漢方薬で胃潰瘍を治療します。

(4)「胃陽虚(いようきょ)」証

心窩部を温めたり手で押さえたりすると痛みが和らぐようならこの証です。

根本には、胃気虚証があります。この胃気虚が長期化あるいは悪化し、からだを温める気の力が衰え、冷えをともなうようになったのが、この証です。

冷えが胃壁において気血の流れを凝滞させるため、胃壁粘膜の血流が悪化して粘液の分泌が減少したり、蠕動運動が低下して胃酸が長時間にわたり胃内に停滞したり、副交感神経が亢進して胃酸が過剰に分泌されたりして、胃潰瘍が発生します。

空腹時に痛みやすく、何か食べると痛みが軽減します。疲れやすい、食欲不振、吐き気、嘔吐など胃気虚の症状のほかに、上腹部の冷え、唾液やよだれが多く出る、などの症状もみられます。

免疫力の低下と関係が深いので、ピロリ菌の繁殖や活性化とも関係があります。

→ 胃を温めて胃気を高める漢方薬を用い、胃潰瘍を治療します。

(5)「胃気上逆(いきじょうぎゃく)」証

吐き気やげっぷ(噯気:あいき)、しゃっくり(吃逆:きつぎゃく)、悪心がみられるようならこの証です。

飲食物を受け入れて消化吸収した残りを下方に送るという胃の機能が失調した状態です。胃気逆(いきぎゃく)証ともいいます。

胃内に胃酸が滞留して胃潰瘍を形成し、さらに胃から痰飲が上逆して吐き気、げっぷ、しゃっくり、悪心などの症状が生じます。攻撃因子が強いタイプの胃潰瘍です。

→ 胃気を降逆して痰飲を除去する漢方薬で、胃潰瘍を治します。

(6)「肝気犯胃(かんきはんい)」証

精神的なストレスの影響で胃潰瘍が生じているようならこの証です。

は五臓のひとつで、からだの諸機能を調節し、情緒を安定させる働きを持ちます。自律神経系と関係が深い臓腑です。この肝の機能(肝気)が滞り、その影響が胃に及んで胃気が停滞することにより、胃潰瘍が生じます。

胃気が停滞すると胃粘膜の血管が収縮し、血液量が低下して修復力も衰えます。

ストレスや、緊張の持続、激しい感情の起伏などの影響で肝気が失調することにより、この証になります。

吐き気、嘔吐、ため息、げっぷ、呑酸、胃のつかえ、上腹部膨満感、食欲不振、排便がすっきりしない、などの症状がみられます。症状は、ストレスの増加や緊張の持続により悪化します。

→ 肝気の鬱結を和らげつつ胃気を回復させる漢方薬を用い、胃潰瘍を治します。

(7)「脾虚肝乗(ひきょかんじょう)」証

もともと胃が丈夫でないところに、ちょっとした緊張やストレス、不安が乗じて胃潰瘍になったようならこの証です。

消化器系(脾胃)が丈夫でないために、少しのストレスなどによる肝気の軽微な変化が生じただけで、脾胃の機能が失調しやすい体質です。

→ 消化器系の機能を高めつつ、ストレスを和らげていく漢方薬で胃潰瘍を治療していきます。

 

◆胃潰瘍・十二指腸潰瘍に効果的な漢方薬


香砂六君子湯、呉茱萸湯、麦門冬湯、小柴胡湯、桂枝加芍薬湯、白虎加人参湯、半夏瀉心湯

胃潰瘍・十二指腸潰瘍を根本的に改善する漢方薬は数十種類あり、あなたに最適な漢方薬が何かは、一般の人には判断が困難です。

それは、ひとりひとりの体質や潰瘍のタイプ・症状によって、効果的な漢方薬が異なるからです。以

上に挙げたのは比較的よく用いられる漢方薬ですが、服用する場合は、漢方薬局などで中医学の専門家に相談して決めることをお勧めします。

◆日常生活の注意


漢方薬で胃潰瘍・十二指腸潰瘍の改善をすることと並行して、日常生活では以下の点に注意してください。

1:食事は規則的に摂る(規則正しい生活をする)

2:よく噛んでゆっくり食べる

3:夜遅くの飲食は控える(特に辛い物・あぶらっこいものなど)

4:食べ過ぎ・飲み過ぎに注意する

5:酒・タバコは控えめにする

6:充分な睡眠をとる

7:ストレスをためない工夫をする(趣味・運動・週末の気分転換など)

漢方薬と養生(日常の健康管理)で、一日も早く潰瘍と訣別してください。

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自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶ必要があります。

どうぞお気軽にご連絡をください。

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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気や症状を改善してくれる漢方処方は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要になります。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や体調により、使う処方が違うからです。

 

そのために必要なのが、カウンセリングです。漢方の専門家がじっくりとお話をうかがって、あなたの体質を判断し、あなたに最適な漢方薬を決めていきます。

 

当薬局は、帝国ホテル内にあるカウンセリング専門の漢方薬局です。まず薬局でカウンセリングをし、その方のご症状やご体質をしっかりと把握し、それをもとに、おひとりおひとりに最適な漢方薬を調合しております。

 

自分にあった漢方薬に出会う秘訣は、「信頼できる専門家のカウンセリングを受けること」です。しっかりしたカウンセリングを受けて、あなたに最適な漢方薬を見つけてください。

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