胃痛
胃痛が起こりやすい体質には漢方が効果的
多くの人が経験する胃痛。一時的なもので自然に治れば心配ない場合がほとんどですが、長引く場合、慢性的に、繰り返し生じる場合は治療を考えた方がいいでしょう。当薬局でご相談をお受けしています。
病院で胃炎、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などと診断されると、西洋薬が処方され、症状の緩和や病状の回復をもたらします。
しかし、西洋薬を用いても完全に治らなかったり、一旦回復しても、慢性的に繰り返す場合があります。また病院で「異常なし」と診断されたにも関わらず胃痛が続くこともあります。
このような人は、背景に何らかの原因があり、胃痛を起こしやすい体質になっています。西洋薬で症状が治まっても再発するのはこのためです。
漢方では、胃痛を起こしやすくしている背景要因を見極め、根本原因に対処する治療を行います。
体質的な背景は人によって異なるため、用いる漢方薬は一律ではありません。しかし最適な処方を得られれば、体内のバランスの乱れが修復され、胃痛が起こりやすい体質からの脱却が期待できます。
また、バランスの乱れが治ることによって胃痛以外の諸症状も改善し、からだ全体の健康を増進させることができます。
では、胃痛を起こしやすい体質にはどのようなものがあるのでしょうか。次項で、胃痛の人によくあるタイプとその背景要因を解き明かします。
*胃痛が治った症例紹介ページは こちら
◆胃痛を起こしやすい人によくあるタイプ・・・あなたはどれ?
<体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます>
(1)「肝気犯胃(かんきはんい)」証
最もよくみられる、ストレス性の胃痛の多くはこのタイプです。
肝は五臓の1つで、体の諸機能を調節し、情緒を安定させる働きを持ちます。自律神経系と関係が深い臓腑です。この肝の機能(肝気)が滞り、その影響が胃に及んで胃気が停滞すると、胃の張った痛みが起こります。
ストレスや、緊張の持続、激しい感情の起伏などの影響で肝気が失調することにより、この証になります。
痛みはストレスの増加や緊張の持続により悪化します。神経性胃炎や胃潰瘍によくみられる証です。
ため息、げっぷ、排便がすっきりしない、などの症状もみられます。
→ 肝気の鬱結を和らげつつ胃気を回復させる漢方薬を用い、胃痛を治します。
(2)「肝火(かんか)」証
ストレス性の胃痛に加えて、胸やけ、呑酸などの熱証がみられるようならこのタイプです。
ストレスなどの影響により(1)の肝気犯胃証となり、熱邪(過剰な熱)が生まれ、それが胃気を乱して胃痛を引き起こします。
胃の灼熱感、口臭、吐き気、のぼせ、頭痛、怒りっぽい、興奮しやすい、不眠、便秘、尿の色が濃い、などの症状もみられます。
肝気犯胃と同様、神経性胃炎や胃潰瘍によくみられる証です。
→ 漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、肝火を鎮め、胃痛を治療していきます。
(3)「胃虚肝乗(いきょかんじょう)」証
もともと胃が弱いためにちょっとしたことで胃が痛むようならこのタイプです。
元来、胃が虚弱なために(胃虚)、肝気の軽微な変化だけでも胃気が失調してしまう体質です。ちょっとした緊張や不安で体調を崩しやすい体質ともいえます。
疲労や寝不足でも体調を崩し、痙攣性の胃痛が生じます。
→ 消化器系の機能を高めつつ、ストレスを和らげていく漢方薬で胃痛を治療していきます。
(4)「胃熱(いねつ)」証
胃の灼熱感が強く、胃痛が繰り返し生じるようならこのタイプです。
胃から上部の消化器官で炎症を起こしやすい体質です。刺激物や、脂っこいもの、味の濃いものをたくさん食べたり、あるいはアルコール類を多飲したりすると、それらが原因で熱邪が生じて胃熱となり、胃痛が生じます。
胸やけ、呑酸、口臭、口の渇き、吐き気、嘔吐などの症状も生じます。
→ この証に対しては、胃熱を冷ます漢方薬で胃痛を治療します。
(5)「胃陰虚(いいんきょ)」証
胃の鈍痛が続く、あるいは繰り返し生じるようならこのタイプです。
胃の陰液(胃液、唾液など)が不足している体質です。陰液が不足して胃が潤わなくなり、痛みが生じます。
陰液不足で乾燥するので口渇が生じ、口の中が粘つく、唾液が少ない、などの症状が表れます。陰液が少ないために相対的に熱が余り、乾嘔(からえずき)、胸やけ、口臭などの症状も生じます。
飲食物の受納、腐熟、降濁ができないので、おなかはすくけれども食べられない状態にもなります。
→ 胃の陰液を補う漢方薬で、胃痛を治していきます。
(6)「胃陽虚(いようきょ)」証
胃部を温めたり手で押さえたりすると胃痛が和らぐようなら、このタイプです。
根本には、慢性的な体調不良や疾患、過労などにより胃気が弱っている胃弱体質(胃気虚証)があります。この胃気虚証が長期化あるいは悪化し、体を温める気の力が衰え、冷えを伴うようになったのが、この証です。
冷たい飲食物の摂取で胃痛が悪化します。空腹時に痛みやすく、何か食べると痛みが軽減します。
疲れやすい、食欲不振、吐き気、嘔吐など胃気虚の症状のほかに、上腹部の冷え、唾液やよだれが多く出る、などの症状もみられます。
→ 胃を温めて胃気を高める漢方薬を用います。
(7)「胃寒(いかん)」証
冷たい飲食物の摂取や、プールなど寒冷の環境下での急性の胃痛なら、このタイプです。
寒冷刺激により、寒冷の性質を持つ病邪である寒邪(かんじゃ)が胃に侵入すると、この証になります。寒邪が気血の流れを滞らせるため、疼痛が生じます。
胃が固まって動かないような痛みや苦しさです。みぞおち辺りが冷える、生つばやよだれが多く出てくる、おなかを温めると少し楽になる、などの症状があります。胃痙攣によくみられる証です。
→ 胃を温める漢方薬で、胃痛を治します。
(8)「食滞(しょくたい)」証
胃痛の原因として、暴飲暴食や、消化が悪いものの飲食が考えられるなら、このタイプです。
胃の許容範囲を超えて飲食物が胃に流れ込んできたために胃に負担が掛かっている状態です。胃のはたらきが失調し、胃痛が生じます。
吐き気、腹部膨満感、げっぷ、胸やけ、食欲減退もみられます。嘔吐すると楽になります。
→ 漢方薬で消化吸収を促進し、停滞を緩和させて降濁機能を回復させ、胃痛を治します。
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上の(7)(8)は比較的急性な症状なので、無理をしなければ一過性ですみますが、つらい症状を短期間で楽にする漢方薬があります。時々このような症状が出る人は常備しておくとよいでしょう。
◆胃痛に効果的な漢方薬
化食養脾湯、安中散、小柴胡湯、竜胆瀉肝湯、黄耆建中湯、麦門冬湯、三黄瀉心湯、呉茱萸湯
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの体質により異なります。
自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶ必要があります。
どうぞお気軽にご連絡をください。
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